いずみちゃんです。
「大陽線が出たら買い」「ゴールデンクロスは上昇のサイン」——こういう話は株式投資を始めると必ず耳にします。でも実際に機能しているのか、データで確かめた話をあまり見かけません。
ということで、手元の37銘柄・5年分の日足データを使って、主要なテクニカル分析手法を一通り調べてみました。
最初にお断りを。 これは個人が手元のデータでさっと試した程度のものです。サンプル数・銘柄の偏り・スプレッドやコストの未考慮など、きちんとした検証とはいえません。統計的に厳密な結論を出せる内容ではないので、参考程度に読んでもらえると助かります。
それを踏まえてもなお、結果はちょっと驚くものでした。
検証の設定
- データ: 東証上場37銘柄 × 5年分の日足
- 予測ターゲット: 翌日終値が +1%以上上昇するか
- ベースライン: 全体の約30%(どのシグナルもなしに翌日+1%以上上昇する確率)
「30%を上回るシグナルが有効」という基準で見ていきます。
ローソク足パターン(28種)の結果
28種類を実装して、72,033件のパターン検出を行いました。
結果から先に言うと、28種類のうちベースライン(30%)を上回ったものはゼロでした。
| パターン | 上昇精度 | ベース比 |
|---|---|---|
| 窓開け上昇(最良) | 29.6% | −0.4% |
| 赤三兵 | 29.4% | −0.6% |
| ハンマー | 27.9% | −2.1% |
| 陽の包み足 | 24.6% | −5.4% |
| 大陽線 | 24.3% | −5.7% |
| 明けの明星 | 23.3% | −6.7% |
特徴的なのは、名前の通ったパターン——大陽線、陽の包み足、明けの明星——ほど精度が低い点です。有名なパターンほど逆効果に見えます。
下落シグナルについても同様で、「窓開け下落が出たら売り」というシグナルの翌日はむしろ平均より上がりやすい結果でした。
1つの説明として、ローソク足パターンの多くは1970〜90年代に発見・普及しており、現代では全参加者が知っているためパターン出現と同時に先回り売買が入りアノマリーが消えている、という見方があります。このデータだけではそれが理由かどうかはわかりませんが、少なくとも「有名なパターン=効く」ではなさそうです。
移動平均・MACD・RSI・ボリンジャーバンドの結果
次に古典的な指標を検証しました(計25,390件)。
| カテゴリ | 平均エッジ | ベストシグナル |
|---|---|---|
| RSI | +1.4% | RSI<20 滞留(+5.8%) |
| ボリンジャーバンド | +0.0% | BB下タッチ(+4.4%) |
| 移動平均クロス | −2.0% | デッドクロス 5×25(+3.1%)のみ |
| MACD | −2.8% | ほぼ全滅 |
移動平均のゴールデンクロス(GC)はマイナスエッジでした。5日・25日・75日の組み合わせをすべて試しましたが、GCの翌日上昇精度は24%台——ベースライン30%を下回っています。MACDのゴールデンクロスも同様で、カテゴリ平均は−2.8%。ローソク足と同じ構図です。
有効だったのは主にRSIの両端で、RSI<20(売られすぎ)が5日以上続いている状態で翌日上昇精度35.8%、翌日平均+0.63%。この数字が後で活きてきます。
出来高を加えると何が変わるか
ここが今回一番驚いた部分です。
RSI<20単独の35.7%という精度に、出来高の条件を加えていくと数字が変わり始めます。
| シグナル | 上昇精度 | エッジ | 5年間の発生件数 |
|---|---|---|---|
| RSI<20 単独 | 35.7% | +5.7% | 771件 |
| RSI<20 × BB下 | 50.0% | +20.0% | 236件 |
| RSI<20 × 出来高1.5倍超 | 49.2% | +19.2% | 183件 |
| RSI<20 × 出来高2.0倍超 | 61.6% | +31.6% | 73件 |
RSI<20 × 出来高2倍超が61.6%。5年で73件なので稀なシグナルですが、条件の組み合わせでこれだけ数字が変わるのは予想外でした。
出来高帯域 × RSI帯域 マトリクス
もう少し掘り下げて、出来高の倍率とRSI帯域を両軸にしたマトリクスを作りました。
出来高倍率→ 0.5以下 0.5-0.8 0.8-1.2 1.2-1.6 1.6-2.0 2.0超
RSI < 20 ▽22.2% ▽24.8% △33.1% ★35.1% ★45.2% ★61.6%
RSI 20-30 ▽16.9% 27.1% 30.1% ★36.6% △33.3% ★40.5%
RSI 30-40 27.9% 25.9% 27.7% 28.2% 31.4% 30.9%
RSI 40-50 ▽23.1% ▽23.5% 26.3% 27.3% 29.8% △34.6%
RSI 50-60 ▽21.9% ▽23.9% 26.2% 28.1% 29.8% 31.3%
RSI 60-70 ▽23.3% ▽24.7% ▽24.2% 26.6% 30.3% ★35.6%
RSI 70-80 ▽19.4% ▽23.0% 25.5% ▽24.6% ▽23.1% ★36.4%
RSI > 80 ▽17.3% ▽21.5% ▽23.4% 27.2% ★36.4% △34.0%
★=ベース+5%以上 △=ベース+2%以上 ▽=ベース−5%以下
このマトリクスから見えてきたことを3点。
出来高の少ない日はどのシグナルも機能しない。
出来高0.5倍以下の列はほぼ▽で埋まっています。RSI<20でも22.2%(−7.8%)と逆効果。「静かに売られている」状態は底打ちではなく継続下落の可能性が高い、と読めます。
出来高急増日のRSIはV字型の構造を示す。
出来高2倍超の列だけ見ると、RSI<20と60〜80の両端でシグナルが立ち、RSI30〜60の中間帯はほぼランダム。
上昇精度
62% ★
| ★ ★
35% |
30% | ─ ─ ─ ─
+────+────+────+────+────+────+────+
<20 20 30 40 50 60 70 >80
逆張り← →様子見← →順張り
RSI<30(逆張り)はパニック的な売り出尽くし → 翌日反発、RSI 30〜60は大商いでも方向感が出ない、RSI 60〜80(順張り)は大商いを伴う上昇はモメンタムが継続しやすい、という構造です。
RSI>80かつ出来高1.6倍以上は「継続買い」になる。
通常「RSI>80は買われすぎ」として逆張りで考えがちですが、出来高を伴っている場合は36〜37%の上昇精度がありました。出来高なしでは17〜21%と大きく下回るため、条件次第で解釈が逆になります。
まとめ
| カテゴリ | 結果 |
|---|---|
| ローソク足28パターン | 全滅(ベースライン超えゼロ) |
| ゴールデンクロス・MACD | マイナスエッジ |
| RSI<20・BB下タッチ | 単独でも一定のエッジあり |
| RSI<20 × 出来高2倍超 | 61.6%(ベース+31.6%)、ただし稀 |
| 出来高0.8倍以下の日 | どのシグナルも逆効果 |
冒頭に書いたとおり、これは個人がざっと眺めた程度のデータです。サンプルの偏りや取引コストの未考慮など、結論を出すには不十分な点が多くあります。
それでも「ゴールデンクロスが逆効果」「有名なローソク足ほど精度が低い」「出来高0.8倍以下の日はRSI<20でも逆効果」という結果は、個人的に少し驚くものでした。少なくとも「見た目が派手なシグナルほど効く」という前提は疑ってみる価値があるかもしれません。
本記事は個人の手元データを用いた実験の記録です。特定の投資を推奨するものではありません。